照井翠『釜石の風』(コールサック社)「言葉」と日々向き合う人の宿命を感じる一冊

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照井翠さんの震災句集『龍宮』を読んでいたとき、5・7・5で刻まれる俳句の漆身の中で選び抜かれ研ぎ澄まされた言葉が胸にストレートに刺さり、ただただ涙があふれて止まらなかったことを思い出す。

そしてその照井翠さんが初めて出されたエッセイ集ということで、タイトルにもある釜石市を訪れ、まちの書店である桑畑書店さんでこの本を購入した。

震災直後のまちの風景、苦悩を背負った人々の様子が、『龍宮』同様、選ばれた言葉で丁寧に、力強く語れている。

8年経ったからこそ、語ることができる言葉があり、その時々の言葉を探し、選び、発すること。そう、語ることは、これからも続いていく旅だ。

泥まみれの風景を、人のこころの微動と叫びを、時とともに移り行くまちの空気を、記憶の糸が切れて忘れられていきそうな東北を

「言葉」を使って語り部のように伝えることは、震災前から、国語の教師として、そして俳人として「言葉」に日々向き合い、発信してきた著者の宿命のような気がしてならない。

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