サロンに行くと、鏡の前の台に雑誌が置かれる。なぜかどこに行っても3冊だ。たぶん台のサイズがほぼ同じなのかも。またカット、カラーをする人がゆっくり読むとしたら3冊が適当なのか、それは分からない。(そういえばなぜだろうと今、思っている次第)
お店で何種類の雑誌を購入しているのかは定かではないが、その選ばれし3冊が何かは客として気になるのである。
青森にいた時は、予約を入れて髪を切りに行くことがなかった。今だって、里帰りしている時に髪を切りに行くこともあるが、本当にふらっと入る。それで何とかやってもらっている。
東京はアポイントの世界だ。
つまり「誰が来るか」はサロンのスタイリストは把握しているはずだ。どこに座らせすかも決まっているはずだ。
「どの雑誌を読みますか」とワゴンに雑誌を載せて見せてもらいながら選ぶことはない。スタイリストがセレクトした3種類の雑誌が、渡されるのである。そして小市民としては、その雑誌が自分の価値をはかる物差のような気がしてしまう。(疲れた時には、特にね)
とある、サロンに行った時、「家庭画報」、「女性自身」、「GINZA」の組み合わせであった。ファッション雑誌の間に、週刊女性が挟まった状態で来たのが笑えた。よく難しい本と本の間にエッチな雑誌を挟んでレジに向かう気分になった。夏目漱石と芥川龍之介の間に「人妻の何とか」とかという、文庫を挟めてレジに持っていくイメージである。
「ふっ」
私は銀座にあるそのサロンで、そんなことを考えている自分に笑いが出た。
手を伸ばした瞬間、はたっと思った。まてよ、銀座である。ちょっと背伸びをしていったサロンだ。ここは最初に取るべき本は「家庭画報」だ。
京都の案内、着物・・・私の生活にない世界が広がっている。そのない世界を見せてくれる、雑誌というのは素晴らしい、と思った。そして「今日の夜は、さくら水産で打ち上げだったな」と思い出した私だが、京都の会席料理は一瞬でも夢を見させてくれた。ありがとう。
さて次である。順番で行くと「女性自身」だ。でもここはあえて「GINZA」にする。そして最後に「あ、こんな芸能界情報もたまーに見てみますかぁ」的に「女性自身」を手にした。
ああ「女性自身」ごめんなさい。この余計なプライドをどうにかしてくれ。と、護国寺にある光文社に心で詫びたのだった。
そして隣に座った「綺麗なお姉さんは好きですか」系な銀座OLっぽいひとが、隣に座った時に、台に置かれたのはファッション誌ばかりで、一冊も「週刊女性」とか「女性自身」とか「女性セブン」がなかった。
愕然とする私に、「もう一冊読みますか」とスタイリストが「週刊女性」を渡してくれた。
その時に思った。雑誌は色々な世界を広げてくれるものであれば、「綺麗なお姉さん=ファッション雑誌」ではない雑誌を渡してみてはどうか。私のように、謎のアラフォー・ゴシップ好きそうな人間に家庭画報をあえて渡してみたように!
さて、そんな私が2年近く通っているサロンがある。
前回から、私の台の上にはBRUTUSが置かれるようになった。(私がリクエストをしたわけではない)
今回も
男の定義
を読みながら、カラーリングをしてもらった。
今の時代、本当の男が必要だ。
このメッセージを、深く受け止める・・・でも、私、女ですが(笑)
そして、スタイリストさんの思惑(?)どおり、私はBRUTUSにはまっている。
2014年9月1日号の「強い酒、考える酒」が特集の号は、その後、本屋で買った。そして保存版として家にある。
サロンで髪を切ったりカラーリングをしている時は身動きをすることができない。雑誌と向き合う大切な時間である。そしてネットではなく、雑誌から得られる情報のほうが結局のところ目に付きやすいし、心に残りやすい。
雑誌の世界は、深いなぁ
そんなことを考えている私はサロンにいても、「綺麗になろう」と一瞬でも思わなかった自分が悲しくも思えたのだった。それは私の雑誌の思考だけではなく、好みを知っているスタイリストさんが私にベストな髪型を作ってくれているからだ。
すごい、スタイリスト!本の仕事は、司書だけではなくスタイリストさんも、その役割を担っているのだ。
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tel:03-3562-6677
HP
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