「最近”スタートアップだ”、”起業だ”って叫ばれているけれど、大変なのは事業承継ですよ」
商工会議所の方からそんな話を聞きました。
起業しても約70%が3年以内に倒産し、10年つづく会社は1割にも満たないといわれています。
代々受け継がれていた企業も、あとを継ぐ人がいない、社会的変化についていけないと倒産するケースも見られます。
「継続は力なり」とはよくいったもので、継続するために必要なパワーは並大抵のものではありません。
『復興の書店』から『継続の書店』へ
2012年に刊行された『復興の書店』には、まちの本屋さんとして文化の炎を途切れさせないと、奮起して被災した書店を復興させたり、新たに書店を始めた店主のみなさんのインタビューが載っていました。
書店に入り浸るのが好きな私は「よくぞ復興してくれた」と感動しながら読み進めていました。
『復興の書店』が出されてから、7年が経ちました。
いま、この本に出ている書店がどうなっているのか、ご存知ですか?
岩手県釜石市の桑畑書店に行ってきました
まちに灯りがともっているとほっとします。
桑畑書店さんの入り口です。
震災前は2階建ての書店でした。震災で被害を受けた、1階部分が鉄骨むき出しになった店舗は私も見ていました。
2014年3月8日~【被災地復興支援のたび】その158
ひときわ生々しい津波のダメージを残すコンクリートの建物「桑畑書店」の前にやってきた。釜石で一番古い書店だそう、今は近くにある「青葉公園商店街」の仮設店舗で営業を再開したらしい。 pic.twitter.com/mTBXwzbsvH— 白銀 (@shirogane0046) 2014年4月10日
その後、プレハブの仮設商店街で再開。プレハブの仮設店舗にもうかがわせていただいてました。
昨日桑畑書店に、開高健ノンフィクション賞を受賞している佐々涼子さんと、大震災直後移動図書館プロジェクトを立ち上げた鎌倉幸子さんが来店しました。3人で和やかに歓談できました。ありがとうございました。 pic.twitter.com/I8h2GsNC7O
— 桑畑眞一 (@kuwa_hon) 2016年4月28日
そして、やっと、2017年にいまの店舗に移転します。震災から6年間。「廃業しない」ことを決めて書店の扉を開け続けています。
【東日本大震災】がれきの中の名簿で再建 顧客の笑顔励みに 被災した老舗書店3代目 「東日本大震災の津波で店舗も書籍も失った岩手県釜石市の『桑畑書店』が新たな店舗を構え、本格的な再建を果たした」 https://t.co/DkcMkENATL pic.twitter.com/3k2OoTIjot
— 積読書店員ふぃぶりお (@fiblio2011) 2017年9月5日
岩手県釜石市の桑畑書店。津波で被災するもなお、被災した地で営業する「まちの本屋」
こぢんまりとした店内には厳選された本が並ぶ。特に2枚目中央の郷土棚には魅了される。店の前を歩いていると笑い声がもれてくる暖かい雰囲気。
本とともに生きる素敵な風景です。#本の日 #本の日111 #読書週間 pic.twitter.com/lvpuUdwZVK— たい(RNパパパ) (@RoTO6nbPTkcyiVT) 2018年11月1日
17坪の小さい書店ですが、上のツイートにもあるように、厳選された本が置かれています。郷土資料の棚も充実しています。
桑畑書店に行くたびに、発見をいただいています。
『句集 龍宮』(角川学芸出版)で第12回俳句四季大賞を受賞した照井翠さんの初エッセイ『釜石の風』(コールサック社)は、桑畑書店さんの一押しです。
震災から8年経ったいま、あらためて「あの日」を体験した人たちの声に耳を傾けてみてはいかがでしょうか。
桑畑書店の中にはいつもお客さんがいて、一人で黙々と本を探す方、おしゃべりを楽しむ方の姿が見られます。
また、ビブリオバトルや作家によるトークイベント等も、行われています。人と本、人と人とをつなぐチャレンジを続ける店主の桑畑眞一さんのパワーに脱帽します。
「あと10年くらいは続けたい。還暦は過ぎちゃいましたが」と、桑畑さんが笑いながら話してくれました。
復興の書店から、継続の書店へ。継続のためにできることはずばり「買うこと」です。
2019年ラグビーワールドカップの観戦に行く皆さま。ぜひ、桑畑書店にお立ち寄りください。
釜石市までは仕事があるからいけないよというみなさま!こちらの記事をご覧ください。