ドキュメンタリー映画「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」から見えたオープンガバメントの実践

コミュニケーション

2019年5月18日(土)よりロードショーとなるニューヨーク公共図書館を描いたドキュメンタリー映画「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」のメディア向け試写会に行ってきました。

ちょうど、3月29日に刊行された『ライブラリー・リソース・ガイド(LRG)第26号』で書かせていただいたオープンガバメントの具体例が見られるシーンがありましたので、紹介させてください。

オープンガバメントの3原則-透明性、参画、協働

このオープンガバメントはTransparency(透明性)、Participation(参画)、Collaboration(協働)の3原則から成り立っています。Transparency(透明性)が担保され情報がオープンになれば、国民自らが自分で暮らす地域の課題を知り解決のためにParticipation(参画)したり、政府と利害関係者同士がCollaboration(協働)することで課題解決に向けた具体的なアクションが生まれていきます。

映画の中で、民間寄付が集まったのは透明性を保てたからという会話がありました。

透明性(Transparency)を保ち情報を隠蔽することなく公開したかこそ、ニューヨーク市民が「寄付」というアクティビティに参画したのです。

「寄付」というと単発寄付を思いつきますが、ニューヨーク公共図書館にはFriends of the Libraryというメンバーシップ制度があります。

メンバーシップ制度も金額ごとに特典が変わってきます。一番、高額のメンバーは「Conservator」(保存者・管理者)で、年間1,500~2,499ドル支払います。(本日4月4日のレートは1ドル=111.40円なので、167,100~278,390円ですね。)

「Conservator」(コンサベーター、保存者・管理者)のみが受けられる特典は以下の通りです。

  • Invitations to exclusive Conservator Salons featuring prominent writers, thinkers, and cultural luminaries(著名な作家、思想家、文化的著名人が出演するコンサベーターサロンへ招待)
  • Additional event tickets upon request(リクエストをいただいたイベントの追加チケット)
  • Recognition of your support in the Library’s Annual Report
    Annual(図書館の年次報告書にあなたのご支援を記載)
  • Subscription to the monthly Conservators Newsletter(月間コンサベーターニュースレターの購読)

出典)
https://www.nypl.org/support/membership/friends-library

映画で著名人の講演のシーンが何度も出てきますが、会場は満席です。映画ではこれがコンサベーターサロンとは言っていないと記憶しておりますが(聞き逃していたらすいません)、もしかしたら年間多額のメンバーシップフィー(会費)を払っている人たちがかもしれません。

このように寄付だけではなくイベントへの参画も促しているのです。

そしえ参画だけで終わるのではなく、参加した人が協働という次のステップに登ってもらうことも考えられていました。

参画から協働へ

図書館のスタッフが寄付についてしていた会話をしていた中で「寄付をしてくれた人に、図書館で行うプログラムを企画・実行してもらうなんてどう」という言葉がありました。

寄付という行為で参画してくれた人を、さらにパートナーとして図書館の深い部分にも協働してもらおうという議論でした。

オープンガバメントの3原則の階段を市民が一つひとつ登っていき、協働で図書館を活性化させる真のパートナーとなってもらうためには、どのようにすればよいのかの道筋を常に考えているのでしょう。

透明性を高め、参画から協働を生み出す施策を、この事例を通して考えてみませんか?

ニューヨーク公共図書館が呼びかけている寄付メニューをこのブログで紹介したいです。次の記事もお楽しみに!

こちら映画について書いた最初の記事です。ぜひ、合わせてご覧ください。

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『ライブラリー・リソース・ガイド(LRG)第26号』をお買い求めください

特集「公共コミュニケーションと図書館のアドボカシー」では責任編集を務めました。

図書館とオープンガバメントについてページを割いています。あと、American Library Association(ALA、アメリカ図書館協会)訪問のときにアドボカシーについて会話した記録も書きました。

ぜひ、お手に取って読んでいただきたい一冊です。

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