1年に一度行われている5 Goals for黒部のフォーラムが2022年1月15日(土)に富山県黒部市の黒部市国際文化センターコラーレで開催されました。
今日の黒部市は晴れ!立山連峰もきれいに見えます。
こちらフォーラムで講演をされた皆さんからのご発表のポイントをまとめています。
まず5 goals for黒部とは何かご説明します。こちらフォーラムの案内にあった説明です。
「5goals for黒部」とは?
5goals for黒部は、第3次黒部市地域福祉活動計画を市民や皆さんに目標を分かりやすく伝え、たくさんの「自分たちのまちを自分たちで良くしていく」アクションを起こすきっかけを生み出すために作られた計画です。地域の多様性のあるメンバーと多くの参画を得てWS型で作られ、その推進と評価も市民とともに進めております。WEBサイト(https://5goalsforkurobe.com/)ではダッシュボードを示して、活動の見える化を行っています。
この取り組みは社会福祉法人黒部市社会福祉協議会が中心となって進めているプロジェクトです。(https://www.kurobesw.com/)
5goals for黒部 まちの福祉を良くするフォーラム
ーOneアクションで地域が変わる、Oneアクションが未来を変えるー
オープニングトーク
フォーラムは、「みんなで、5 GOALS for 黒部(Long Ver.) 」の動画からスタートしました。
最初は、5 Goals for黒部の仕掛け人、小柴徳明さん(黒部市社会福祉協議会)、長谷川雅子さん(CSOネットワーク)のトークです。
【小柴さん】
5 Goals for黒部は「第3次黒部市地域福祉活動計画」をわかりやすくまとめたものです。活動計画と聞くと難しく感じます。そこで市民のみなさんに親しみやすい形にしたいと5 Goalsと名付けました。
計画を作って終わりではなく、作った後に活動を推進していくのかに取り組んでいます。
地域の活動計画のつくり方、指標づくり、目標設定の仕方を日本のほかの地域にも知ってもらいたいのでYouTubeライブで配信しています。
【長谷川さん】
2017年に黒部市大きい布施地区でワークショップをしたことをきっかけに2018年より5 Goals for黒部の策定がはじまりました。
北米を中心に活動しているCommunity Indicators Consortium (CIC)というネットワークから以下の点を学びながら進めてきました。
- 目標の根拠をウェブ上でわかりやすく示すことで、策定に直接かかわらなかった方にも伝えていくこと。
- 目標の指標を地域のみんなでつくる。
- 地域の参加で進める。
アメリカのCICからメッセージが届きました。
【司会】
小柴さん、長谷川さんが大切にしてきたことは何ですか。
【小柴さん】
参加を大切にしました。
たくさんの人に参加してもらう仕組みが大切です。通常、プロジェクトのメンバーは各団体の代表を集めることが多いです。
そうすると65歳以上の男性ばかりが集まる会になりがちです。5 Goals for黒部では、男女比は半々、さまざまな年代人たちが関わってくれています。中高生の子どもたちには、アンケート調査をしました。幅広い人の意見をもらうことを心掛けました。
公平、平等を意識してたくさんの人が参加して協議ができる場をつくってきたのが特徴です。
【長谷川さん】
シャルダンさんが黒部に来たのは2020年。その時シャルダンさんが言った「私たちの知らないところで、私たちのことを決めないで」と言葉が印象に残っています。
推進や評価もみなさんと一緒に指標をつくり、進めていくことを大切にしました。
Chapter1.活きた計画作り
今まで計画づくりとの大きな違い(大布施地区社会福祉協議会/松原宗一さん)
今回の活動計画の策定にあたってはこれまでに個別の事業をどのように推進していくかではなくみんなが目指す目標を固めて、その目標に向かっての取り組みを話した点です。
誰もが安心して暮らせるやさしい福祉のまちをつくるためには、自分たちの町を、自分たちでよくしていくという住民主体の活動が求められています。
残念なことに、近年、つながりが希薄化する傾向にあります。地域共生社会を目指して「ありがとう」とつたえたら「おたがいさまですよ」と返ってくる社会の実現を目指し、この計画を進めています。
評価推進、目標の設定の毎年見直し改善を行いながら社会の変化に合わせ改善をしているところです。
若い世代から私の世代までバランスのよい構成になっています。若い人の意見を聞いて大変参考になりました。
私の年齢の層は、子育てにタッチしなかった。いま振り返ってみると申し訳ないと思っています。いま子育て世代の人はそれぞれ課題がある。それらの課題を出し合ってみんなで考えて進めてきました。
市の計画策定はすでに「課題が決められている」ことが多いです。でも今回は、課題はなにかからみんなで考えていきました。
社会福祉は高齢者福祉に偏りがちというイメージがあります。今回、若い世代を含めいろいろな世代を含め参加がありましたので、その声を発信していきたいです。
社会福祉は可視化とかデータ化が遅れていた気がしています。これから可視化・データ化に取り組んでいきたいです。
計画づくりに参加してみて(CSOネットワーク/長谷川雅子さん)
関われた方たちが地域のことを学び、気づき、育っていかれた―特に若い方が地域活動のリーダーになっていく姿が手に取るように分かったのが5 Goalsの価値だと思っています。
5 Goalsのなかに「U-40の力を活かそう」というものがあります。40代以下の方が、参加してくれたのがよかったです。委員会の中で緩やかなつながりが出来上がってきたと感じています。
地域福祉や課題と聞くと障害者福祉、高齢者福祉という大きいところから始まりがちですが、身近なことから考えていきました。たとえば大きな高齢者福祉という考えも、チキの小さい問題が解決されないと大きな問題も解決されないと思っています。
最初の頃は、身近な問題は世代や属性によって違うのでかみ合わなかったときもあったと記憶しています。でも回を重ねるごとに、多様性の中で課題を共有する意味を感じていただくようになり、一つのビジョンに向かうという動きが出てきました。
Chapter 2. DIYな計画作り
つくることに関わってみて、自分の意識の変化(子育てグループ「みんなの笑顔」/橋詰真知子さん)
知ることから始まる、参加することから始まることを強く感じました。お互いさまの社会の実現のためには他人ごとではなく、自分ごとにして考えることが大切だと思いました。
自分ができることは何だろう、と考えるようになり、積極的に関わるようになりました。
子どもたちにもそれを伝えたいです。子どもが参加できる取り組みには、みんなで参加しています。
子どもの頃から自分の町を知り、考え、行動することが特別なことではなく自然なこととして育ってほしいと思っています。
5 Goalsの会議に出たあとは、家の中で「こんなのこと話し合ったんだよ」「こんなことを考えているんだよ」と子どもたちに話をしました。
2015年に自然豊かな環境で子どもを育てたいと思って黒部に引っ越してきました。地域の人たちが温かく迎えてくれたので、人のつながりの豊かさが、暮らしやすさに綱買っていると思います。この町に住んでいる一人として、何かお手伝いをしたいと思いました。
まちづくりというと自分から遠く難しい話に思われがちです自分がすんでいる町だからこそ身近なこと。一人でもそう感じてくれる人がもっと増えてもらいたいと思っています。
これからも自分でできることからやっていきたいと思います。
自分たちに主体性が生まれたこと(黒部青年会議所 元理事長/島大樹さん)
福祉に対して縁遠いという印象がありました。「お互いさまの助け合い」が福祉だと知りました。困っていることを知って、行動して、できることから始めることが大切です。でも、「主体性がないとそれができない」と思うようになりました。
円滑な会議を進めるためにコの字型のテーブルで有識者を集めて決めるのはよいこともあるし、そうではないほうがよいところもあります。
ゼロから始めるのは会議としても大変です。決裁の人も巻き込む必要があります。
参加しやすい工夫をしてもらいました。意見は全部出して模造紙を10枚、20枚貼り付けて出てきた意見を全部出して、それをまとめていく作業をしました。
途方もない作業だったと思いますが、それがあったのがよかったです。
会議は参加しずらい、発言して否定されるのも怖いと思ってしまいます。否定しない、全部の意見を出す、まとめるーいろいろなことを決めるときにこの形がよいと思います。でもそれをやるには情熱が必要です。会議が進むにつれ、参加者の目に情熱の炎が灯ってきたのが見受けられました。
Chapter 3. 指標を考え直す
ダッシュボードづくりWSのこと(リンクデータ/下山紗代子さん)
データと聞くとハードルが高いという印象を持つ人が多いと思います。
なるべく専門用語やカタカナを使わないようにしました。アウトプットとアウトカムという言葉も、日本語訳を作りました。
アウトプットは「行動指標」どれくらいできたか
アウトカムは「効果指標」どれだけ効果が出たのか
と使いました。専門用語を使わず「これをやった結果どんな変化が起こりますかね」というように問いかけをしていきながら進めました。
みなさんもデータを見て「こんなデータがあるんだ」「意外だった」と楽しさを感じてくれたのではないかと思います。データに対するハードルが下がったという声をもらってうれしかったです。
データよりも現場を見ないとという首長がいました。現場を見ることは大切ですが、でも現場に行けない方もいます、またそれぞれ見ている視点が違う中どうやって共有するかと考えたときに客観的なデータもないと議論できない可能性もあります。
立場が弱い方は、データを客観的に見て伝えるツールとして使えます。データで説明をするスキルをつけていただきたいです。
最初はアドバイザーという肩書でしたが、それだと偉そうな人と思われるかもしれないので「ちょっとデータに詳しいメンバー」という肩書になりました。
硬い名前を変えていったこと(NPO法人宇奈月自立塾/小泉祐太朗さん)
5 Goals for 黒部は、「第3次黒部市地域福祉活動計画」を指しています。でも「第3次黒部市地域福祉活動計画」と聞いても、頭に入っていかないのではないかと思います。
5 Goals for 黒部は、黒部のみんなで町を浴していこうという思いが込められています。わかりにくいから変えていこうという流れに委員会の中でなっていました。
私自身も、生活の中で困りごとがあったら「そんなもんだ」「誰かが解決してくれるだろう」と思っていましたが、いまは一人ひとりが行動すると変わると意識が変わりました。
福祉は高齢者介護、障害者福祉だったり、自分の生活と切り離された場所にあるものと思いがちですが、みんなの生活の困りごとをみんなで考えていくことです。
5 Goals for黒部を通じて、黒部のみなさんに理解していただけるとよいなと思っています。
Chapter 4. 地域の見える化
見える化することの効果(NPO法人宇奈月自立塾/牟田光生さん)
人は見ないとわからない。
会議は承認型の会議ではなく、ワークショップ型で否定をしないで意見を集約して、それがデータ化され、何が足りないか・何が必要かに手が届けば大きな力になります。
生活困窮・ニートの問題でも、「いえない環境」があると感じてますが、それは見えない環境でもあります。どうやって生きやくするのかという展開に持ってきたいです。
それについて話し合っていく。小さい自治体だと少子高齢化の問題で、祭りや雪かきで人手が足りなくなる。それに対して、どうすればよいのかわからないことも多いけど、年配の方と中年層と、若者と話し合っていく、動かしていくところまで来ているので、そうしていきたいと思っています。
100人に1人は引きこもりといわれていますが、見えないとわからない。我が事としてどうしたらよいか地域の中で意見を出し合い、いいことは伝承していく。足りないことはICTも活用していければよいと思います。
課題を抱えている人の背景を知ること、これをしていこう、新しいことに挑戦しようという思いを生み出せられたら、新しい黒部が生まれると思います。
CICとの連携、全国の取り組みなど(CSOネットワーク/長谷川雅子さん)
CICとの連携ですが、推進の段階でCICの2人が黒部に来てくれました。そこで、みんなで地域指標をつくる大雪さ、目的、方法、事例を紹介してくれました。
次の年から地域指標を作る段階に入りました。
見える化は5Goalsは2段階あったと思います。最初は、課題を可視化するという意味で既存のデータを基に課題を特定しました。
2段階目は、目標の達成度を見るために、どのデータを見るのかを皆さんで話し合いました。
公民難の稼働率や地域コーディネータの数、民生委員の数など、活動に近いところのデータがあることが分かりました。「民生委員はどうやって決めているんだっけ」という疑問なども出てきて、地域への理解が高まったと感じました。
地域の中ですでにされている活動を改めて気がつく機会になりました。
5 Goalsは発信をしているので、他の社協さんも関心を示してくれています。座間市の社協が同じようなものをつくりたいと進めています。
Chapter 5. DIYなまちづくり
計画づくりがゴールではなく、つながっているか?(インパクト・マネジメント・ラボ/鎌倉幸子さん)
ここは私のパートだったのでリアルメモが取れませんでした。ポイントをまとめます!
- 時間をかけて計画をつくり、できた瞬間燃え尽きてしまうことがあります。計画は作った後、やることが大切です。
- データと現場のバランスを大切に!
- 計画は、誰のためにつくったのか、なぜつくったのかを常に振り返りましょう。
- 「変わること」ことを前提としながら計画を見直していこう。
住民主体になったのか?その変化はあったか?(黒部市社会福祉協議会/小柴徳明)
動画を作成するにあたり5時間くらい撮影して、メンバーにインタビューをしてもらいました。また今日のフォーラムも開始20分前に一度流したくらいです。
台本はないのに、あれだけしゃべれるというのは、関わって、自分で考えてやったからこそしゃべれるんだと思いました。
最初のワークショップは10代から80代が参加。座る席はくじ引きで決めました。最初はぎくしゃくしました。
その場で子育て世代の人が「雨が降った時、子どもの遊び場がない」という発言をされました。老人クラブの会長は「暗くなったとき街灯がないので散歩ができない」と言われました。かみ合っていないけれど、まずはお互いのことを知ることが大切です。
小さなテーブルの中でできたのがよかったところです。
活動計画策定にかかわるのは2回目です。自分でつくって5年間自分の棚の中に置いてました。1年間かけてつくったのに、使わなかったのです。どうせやるのであればいいものをつくろうというのが原点になります。
5GOALSのこれから
3人のクロストークで進められました。
【小柴さん】
4年半以上策定から関わってきましたが、振り返る機会がなかったので、今日振り替えてよかったです。振り返りが終わりではなく、明日からまだやることがあります。
【下山さん】
5 Goalsのページにダッシュボードがあります。目標に向かってどれだけ進んでいるのかがわかるようになっています。しかし、まだデータが入手できていないものもあります。
【小柴さん】
行政に電話してデータがあるのかを聞いていますが、持っていないものもありました。
【下山さん】
アメリカではデータを可視化して分析をみんなでやる傾向があると聞いていますが、いかがですか。
【長谷川さん】
データがオープンになっていて入手できるようになっています。そのデータを組み合わせて、状況を分析したりしている人もいます。
【下山さん】
U-40に選挙の投票率がありますが、年代別、地区別のデータまでは公表されていません。それがわかると、対策を考えられる。国全体でもオープンデータを進めています。税金でつくられたデータは公開すべきという動きが世界ではあります。使えるデータが増えるとよいですね。
【長谷川さん】
最初は大変でしたが、徐々に楽しくなってきた、ワークショップの意味を実感できたという話が多かったです。この動きを止めずに進めていけたらよいと願っています。
新型コロナウイルス感染症の影響で地域活動が止まっている状態だと思いますが、再開されるときに、対話の場を入れていただきながら、再開していただきたい。違った形になるかもしれない中、対話を持って進めていっていただけたらよいなと思っています。
【小柴さん】
オンラインで本当に進められるのかは不安でした。ワークショップもオンランでやってみました。黒部社協までくるまで時間がかかる人や子どもの世話をしている人が「オンラインだから参加できる」ということで参加のハードルが下がったことも事実です。
これからも月に一回黒部の福祉をよくする人たちが集まって話し合う場づくりをやってきたいです。
次期計画に向けてですが、来年の途中から策定に入るのですが、日々、指標の入れ替え、細かい変化、小さなアップデートを沢山する。切れ間内計画が理想の計画じゃないかと思っています。
【下山さん】
冊子を作らなくてもどんどん発信していけばよい。5年に一回やるとしたらゴールの確認くらいになるとよいのでは。
当日の動画
当日の様子はYouTubeで配信されていますので、ぜひご覧ください。