カンボジアには「今日の色」というものがあります。
最初にその事実を知ったのは、11月にカンボジアで行われる最大のお祭り「水祭り」でのこと。
水祭りの最中、プノンペン市を流れるトンレサップ川で行われるボートレースが行われます。
カンボジア全土から参加者が集まり、競うこのレースの期間はプノンペン市が熱気に包まれます。
さて、いつもは人がごった返す川沿いでボートレースを見ていたのですが、知り合いから特別席の招待状をもらったのです。
その招待状には「男性はネクタイ着用。女性は今日の色の巻きスカートで来てください。」という記載がありました。
私が仕事をしていた国際協力NGOで伝統文化課のアドバイザーを務めているイートン氏さんに「今日の色は何ですか」と聞いたところ、やさしく教えてくれました。
月曜日はオレンジ、火曜日は紫、水曜日は緑、木曜日は白地にいろいろな色が混ざったもの、金曜日は青、土曜日は濃い紫、日曜日は赤です。
7色のサンポット(カンボジアシルクでできた巻きスカート)を揃えれば、いつどんな式典があっても大丈夫ですね。
私が招待を受けた水祭りの日は日曜日だったので「赤」の日でした。
ノロドム・モニニヤット・シハヌーク妃殿下を含め女性はみな赤のサンポットを着用していました。
今日の色を知らなければ、一人で違う色の服を着ていき、恥を書いていました。
カンボジアにいたときに文化省から出されていた雑誌に載っている「今日の日の色」をボランティアさんが翻訳をしてくれました。
そのときのメモが出てきました。カンボジア文化省が出した雑誌の名前など出典がわからないのですが、そのときのメモが見つかったので掲載します。
今日の色
詩
赤は日曜日に着る、鮮明なすばらしいオレンジ色は月曜日。
紫は火曜日に身につけ、水曜日には緑に変わる。
木曜日黄緑になり、聖なる金曜日は青になる。
土曜日は昔ながらのプラムの色。1日目
1日目は日曜日と呼ばれています。日曜日は最初の星である太陽を表しています。太陽は私達の目にさんさんと輝く光を送ります。太陽が強く輝くと、我々は恐怖を覚えます。2日目
2日目は月曜日と呼ばれています。月曜日は月を表しています。月は黄色い光を放ち、我々の心に平安や落ち着きを与えてくれます。3日目
3日目は火曜日と呼ばれています。火曜日は火星を表しています。火星は月とは違い、強情さや反抗性を持っています。それゆえに火星は赤と濃い青を混ぜたような紫色をしているのです。4日目
4日目は水曜日と呼ばれています。水曜日は水星を表しています。水星は残酷でも厚かましくもなく中立を守っています。そのために青、白、茶色など多くの色が混ざったきれいで清潔な緑であるべきです。5日目
5日目は木曜日と呼ばれています。木曜日は木星を表しています。木星は魔法の所有者であり、文学者であり、すべての分野の教官であります。そうして生徒に自然を伝えています。自然は緑色をしています。自然は森や人間に命を育みます。緑は新鮮な色であるべきです。それは傷をつけたり、他人を憎しむような激しい色であるべきではあってはいけません。美しい緑はやさしさを表す黄色がベースとなります。その黄色と財産を表す青、そうして純粋さや現実を表す白を少し加えて作ります。我々の先祖は木曜日を「王家の教官の木曜日」と呼んでいました。それゆえに木曜日に学校を開校するのが慣わしでした。そうすれば生徒が文字や算数、その他の教科についてより早く学び、覚えることができると信じていたからです。6日目
6日目は金曜日と呼ばれています。金曜日は金星を表しています。金星も力はありますが、火星や土星の様に強くはありません。金星は幸せと、慈悲をもたらします。しかし怒った時は、少し混乱をもたらします。それゆえに少しだけ黒の入った濃い青を用います。7日目
7日目は土曜日と呼ばれています。土曜日は土星を示しています。土星は生命の最後の星で、同情と哀れみを示しています。木星は常に人間の世話をしていますが、1度怒ると怒らせた者を破壊してしまいます。我々は「怒りの木星」と「苦しみの木星」と2通りの呼び方で呼んでいます。それゆえに黒と青を混ぜたプラム(濃紫色)の色を用いています。
カンボジア駐在のときには、ぜひ7色の今日の色のスカートを揃えてくださいね。
去年(2019年)カンボジアに行ったとき、小学校で見たのも「今日の日の色」の手作りポスター。子どものときから、「これは抑えておけ」ポイントなのです。
カンボジア駐在になったらぜひ今日の色のスカートを揃えてくださいね。
ちなみに毎日の業務のときの服はこんな感じです。